鳳鳴は祖父の俳号

日記 メモ そんなの

安く作る「技術」

 もう製造業は離れてしまったけど、設計部門としてよく工場には行ってたし品証の人達とも一緒にやってたのでちょっと読んでみた。
 2012年6月の出版で、日本の製造業の高コスト体質と局所最適化、人材育成の重要性に関してまとめてある。おそらく量産に関わる人達ならなんとなくそう思っている内容じゃないだろうか。

以下、感想メモ。

・A〜Eの部分からなるモジュールで構成される製品をそれぞれの担当がそれぞれのモジュールの最適化をするよりも、モジュール1個をばっさり削るような方法が可能ならコストダウンの効果は大きいだろう。でもそれが担当レベルでできるか?
・自分の体験から言っても、製造業の現場でのコストダウンの努力は担当レベルでかなり頑張っている。しかしできるのはあくまでも担当の部分のみで全体を巻き込むようなことはやりずらい。工場だけで出来るのは局所最適化。
・いったん障害が発生したらそのテストが以降必須になってくる。ライフの長い製品はこれが雪だるま式に積み重なり、テストが重くなる→出荷試験コストのアップ。品証は自分からテスト項目を減らすようなことは絶対に言わないので、設計部門から提案して削除してもらうこともある。できる場合だけど。
・ASICの論理障害が出荷後に出ると検証コード追加&リメイクとなる。論理障害だけの場合はこの検証コードは設計部門内で確認できればOKのはずなのだが、なぜか出荷試験の項目に入ることも。ムダなんだが止めようがない。というより止める苦労が割に合わない。
・品質保証部は守りの体制なので、過剰品質(テストの重複)を改善するといった向きには動かない。工場側からつついても動かない。設計部門と工場が結託してデータ+分析結果で減らしてもらうのは可能だけど、設計部門からしてみたら手間が増えるだけであまりメリットがない。さらに上の方から言ってもらうしかないのか。


 ここで思い出すのはネットブック市場に参入しようとする日本メーカーの会議の模様をNHKで放送したやつ。部長さんが「この品質は絶対に落とせない」と言うシーンがあったけど、当時のネットブックにはそこまでのコストに見合う品質が市場からは求められてなかったということだろうな。結局出荷されたので、その部長さんは上の方に説得されたのかも。

安く作る「技術」

安く作る「技術」